「査定の前に、何か準備しておいたほうがいいのかな」「キズは直しておくべき?車検は通してから売ったほうがいい?」――初めて車を売るとき、こんな疑問がわいてきますよね。
元中古車ディーラーとしてたくさんの車を査定してきたぼくの本音を言うと、査定前の準備は「お金をかけずにできること」だけやれば十分です。逆に、お金をかけてやったことが、査定ではほとんど取り戻せないこともよくあります。
この記事では、やると得すること、やらなくていいこと、そして査定当日の伝え方までまとめてお話しします。
まず知っておきたい「査定額の決まり方」
準備の話に入る前に、ひとつだけ大事な前提をお伝えします。
中古車の値段は、市場の相場で9割が決まり、売り方や準備で動くのは残りの1割くらいだとぼくは考えています。車種・年式・走行距離・色・グレードといった「変えられないこと」が、金額の大部分を決めているんです。
だからこそ、残りの1割の部分で損をしないことが大事になります。準備で金額が何十万円も跳ね上がるわけではありませんが、「安く見られる理由」を一つずつ消していくことはできます。
ポイント:準備の目的は「高く見せる」ことより「安く見られる理由をなくす」こと。お金をかけずにできることから始めましょう。
査定前にやると得すること
1. 洗車と車内の掃除
いちばん手軽で、いちばん効果を感じやすいのがこれです。きれいにしたからといって相場が変わるわけではありませんが、汚れているとキズやへこみが見えにくく、お店は「見えないところに何かあるかも」と安全を見た金額を出しがちです。
- 外はふつうの洗車で十分(洗車機でもOK)
- 車内はゴミを捨て、掃除機をかけ、窓の内側をふく
- トランクの荷物は全部おろしておく
ディーラー時代、査定の前日に洗車と掃除をしてきてくださるお客さまの車は、それだけで「大事に乗ってきたんだな」と伝わりました。査定する側も人なので、その印象は意外と大事です。
2. においを抑える
たばこ、ペット、芳香剤のにおいは、査定で下がりやすいポイントです。次に買う人が気にするので、お店はにおいを消すための手間や費用を考えて金額を出します。
- 晴れた日にドアを全部開けて、しっかり空気を入れかえる
- シートやマットに掃除機をかけ、ペットの毛を取る
- 強い芳香剤は外しておく(においを上からかぶせると、かえって気になることも)
完全に消すのは難しくても、できる範囲で抑えておくだけで印象は変わります。
3. 整備記録簿(点検の記録帳)をそろえる
整備記録簿とは、いつ・どこで・どんな点検や部品交換をしたかが書かれた記録の冊子です。「メンテナンスノート」と呼ばれることもあります。車検証と一緒に、グローブボックス(助手席の前の物入れ)に入っていることが多いです。
これがあると、「この車はきちんと手入れされてきた」という証明になります。特に走行距離が多い車ほど、記録簿の有無で安心感が大きく変わります。
4. スペアキーを探しておく
スペアキー(予備の鍵)がそろっているかどうかも見られます。最近の車の鍵はリモコン付きやスマートキーが多く、作り直すとそれなりの費用がかかるからです。家の引き出しなどにしまったままになっていないか、査定前に探しておきましょう。
5. 取扱説明書・純正パーツをそろえる
- 取扱説明書:車に付いていた説明書の冊子。あると次の持ち主に渡せるので、そろっているほうが好まれます
- 純正パーツ:社外品のホイールやマフラーなどに交換している場合、外した純正の部品が残っていれば一緒に出しましょう。中古車は純正の状態のほうが売りやすいことが多いです
6. 相場を調べておく
これがいちばん大事かもしれません。相場を知らずに査定に行くと、最初は20万円以上安い金額を言われることもあります。自分の車がだいたいいくらで売れそうかを知っておくだけで、その金額が高いのか安いのかを判断できるようになります。
相場の調べ方は、車の買取相場の調べ方でくわしく紹介しています。販売サイトの値段から逆算するやり方なので、初めての方でもできます。
| やると得すること | かかるお金 | ひとこと |
|---|---|---|
| 洗車・車内の掃除 | ほぼゼロ | 安く見られる理由を消せる |
| においを抑える | ほぼゼロ | 換気と掃除機だけでも違う |
| 整備記録簿をそろえる | ゼロ | 手入れしてきた証明になる |
| スペアキーを探す | ゼロ | ないと下がることがある |
| 取扱説明書・純正パーツ | ゼロ | そろっているほうが売りやすい |
| 相場を調べる | ゼロ | 安い金額にすぐ気づける |
査定前にやらなくていいこと
1. お金をかけたキズ直し
小さなキズやへこみを、査定の前に修理工場で直そうとする方がいます。でも、修理にかけたお金ほど査定額が上がることは、まずありません。
お店は、自分たちで安く直すルートを持っていることが多いです。お客さまが工場で3万円かけて直したキズでも、お店からすると「数千円〜1万円くらいで直せるキズ」として見ていることがある。そうなると、差額はそのまま損になってしまいます。
ディーラー時代、査定の直前にバンパーのキズを直してきたお客さまがいて、「修理代くらいは上がりますよね?」と聞かれたことがありました。正直にお伝えすると、上がったのは修理代のほんの一部だけ。お客さまはがっかりされていました。キズはそのまま見せるのがいちばんです。
2. 直前の車検
「車検が残っているほうが高く売れる」と考えて、売る直前に車検を通す方もいます。たしかに車検が残っていると少しプラスに見られることはありますが、車検にかかる費用(十数万円になることも)ほどは上がらないことがほとんどです。
車検が近いなら、通す前に売るほうが得になりやすいです。売るタイミングについては、車を高く売る4つのコツの中でも話しています。
3. 高いコーティング
売る前にガラスコーティングなどをかけても、その費用が査定に上乗せされることはほとんどありません。ふつうの洗車で、汚れが落ちていれば十分です。
注意:査定の前にお金をかけるのは、ほとんどの場合「かけた分を回収できない」と考えておきましょう。迷ったら、何もせずにそのまま見てもらうのが正解です。
査定前によく聞かれる「これってどうする?」
ディーラー時代にお客さまからよく聞かれた質問にも、まとめてお答えしておきます。
ガソリンは満タンにしておくべき?
満タンにする必要はありません。ガソリンの量で査定額が変わることは、ほとんどないと考えて大丈夫です。お店まで乗っていく分や、引き渡しまでに乗る分が残っていれば十分です。
ドライブレコーダーやETCは外したほうがいい?
付けたままでも外しても、査定額への影響は大きくないことが多いです。新しい車でも使いたいなら外してもかまいませんが、外したあとの配線やテープの跡が残ると、かえって見た目が悪くなることもあります。自分で外すのが不安なら、付けたままにして、引き渡しの前にお店に相談するのが安心です。
社外品のパーツは付けたままでいい?
社外品のホイールやナビなどは、お店によって評価がまちまちです。純正の部品が残っているなら、純正に戻すか、純正の部品を一緒に渡せるようにしておくのがおすすめです。社外品は、別でパーツとして売ったほうが得になることもあります。
小さな警告ランプがついたままだけど?
警告ランプがついている場合は、無理に直そうとせず、そのまま正直に伝えましょう。原因がわからないまま修理に出すと、費用がかさむこともあります。お店側は、ランプの意味をふまえて金額を出してくれます。
| こんなとき | おすすめ |
|---|---|
| ガソリンが少ない | そのままでOK |
| ドラレコ・ETCが付いている | 付けたままでもOK。外すなら跡に注意 |
| 社外パーツに替えている | 純正の部品があれば一緒に出す |
| 警告ランプがついている | 直さずに正直に伝える |
査定当日の伝え方
準備ができたら、あとは当日の伝え方です。ここでも損をしないコツがあります。
正直に伝えること
- 修復歴(車の骨格を直した跡)や事故のこと
- 調子の悪いところ、警告ランプがついたことがあるか
- 直したことがある場所
これらは、聞かれたら正直に答えましょう。隠していてあとで見つかると、減額やトラブルの原因になります。修復歴について詳しくは、修復歴ありの車の査定の記事を読んでみてください。
自分から伝えるとプラスになること
- 「オイル交換は○○キロごとにやっていました」
- 「タイヤは去年替えたばかりです」
- 「禁煙車で、ペットも乗せていません」
- 「スペアキーと記録簿、取扱説明書がそろっています」
査定する人がすべてに気づくとは限らないので、良いところは自分から伝えてOKです。
その場で決めなくていい
査定のあと「今日決めてくれたらこの金額で」と言われることがあります。でも、車の売買にはクーリングオフ(契約後に無条件で取り消せる仕組み)が使えません。一度契約すると、あとから取り消すのは簡単ではないんです。
「ほかのお店にも見てもらってから決めます」と言って大丈夫です。比べてから決めるのが、いちばん損をしない方法です。
ポイント:悪いところは正直に、良いところは自分から。そして、その場で決めずに比べてから決めましょう。
まとめ
- 査定額の9割は相場で決まる。準備の目的は「安く見られる理由をなくす」こと
- やると得するのは、洗車・掃除・におい対策・記録簿・スペアキー・取扱説明書・純正パーツ・相場調べ。どれもお金はほとんどかからない
- お金をかけたキズ直し・直前の車検・高いコーティングは、かけた分を回収できないことが多い
- 当日は、悪いところは正直に、良いところは自分から伝える
- その場で決めず、何社か比べてから決める
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